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「フェルマーの最終定理」の証明に一役買った天才数学者が亡くなる

こんにちは。masaです。

 

今日、数学を愛するすべての人にとって、突然の悲報が舞い込んできました。

 

 

プリンストン大学ホームページから

Professor Emeritus Goro Shimura 1930—2019 | Math

 

フェルマーの最終定理を解決するために大きなカギを握っていた「谷山・志村予想」を提唱した、日本人数学者、志村五郎先生が89歳で亡くなったのです。

 

今回は、志村先生が亡くなったことを惜しみつつ、「フェルマーの最終予想」解決に志村先生の功績がどのように役立ったのかを、ざっくりと解説してみたいと思います。

 

 

 

 

フェルマーの最終定理」とは

フェルマーの最終定理」とはどういったものなのでしょうか。

わかりやすいように、ざっくり説明してみたいと思います。

 

中学生でも理解できる「フェルマーの最終定理

 フェルマーの最終定理は、次のような予想です。

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数学の難問と言われるものは、問題そのものを理解するだけでも難しいものが一般的ですが、この「フェルマーの最終定理」は、問題そのものを理解するのはそれほど難しくありません。

 

n=2のときは、中学校で習う「三平方の定理ピタゴラスの定理)」として有名ですが、n=3以上の整数となると、この等式を満たす自然数が存在しない…

 

一見、カンタンそうに見えて、実はかなり難しい難問。300年以上、数々の天才数学者の人生を狂わせたと問いとして有名です。

 

なぜ「フェルマーの最終定理」は証明が難しいのか

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フェルマーの最終定理の証明が難しい原因の一つは、「すべての3以上の自然数n」について、等式を満たす自然数の組(x, y, z)が存在しないことを示さなければならないためです。

 

この定理が間違っていることを示すには、ある自然数nについて、1組でも方程式を満たす自然数(x, y, x)の組が見つかればよいのです。

 

ところが、「どんなに頑張っても、どうやらその1組さえ見つからない。しかも、どの自然数nについても言えそうだ」という主張が、このフェルマーの最終定理の内容なのです。

 

自然数nが無限に存在するため、その証明には多くの困難が生じました。

 

具体的な自然数については証明できたものの…「無限」の自然数に苦しめられる

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具体的な自然数nについての証明は、様々な数学者によって証明されました。

  • n=4のとき フェルマー自身による証明。「算術」に記された
  • n=3のとき オイラーによる証明
  • n=5のとき ソフィ・ジェルマンらによる証明
  • n=14のとき ディリクレ 及び n=7のとき ラメ による証明

これらの証明により、その他多くの自然数について、どうやらフェルマー予想が成り立つことが示されることになったのですが、

 

依然として一部の自然数について解決できない状態が続いていました。何か異なったアプローチが必要だったのです。

 

谷山・志村予想とは

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一方で、日本人数学者が1955年に提唱した谷山・志村予想とは、次のような予想です。

 

すべての楕円曲線は、モジュラーである。

 

???楕円曲線て何?モジュラーって何?という感じですが、難しいので

  • 楕円曲線」という関数のグループがあるのだな
  • モジュラーという分類(正確に言うと対称性)があるのだな

と思っておけばよいでしょう。のちに、フェルマーの最終定理を証明する際に大きな役割を果たすようになるのです。

 

ワイルズ楕円曲線の第一人者 谷山・志村予想の解決を志す

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copyright C. J. Mozzochi, Princeton N.J

ワイルズは幼いころから、「フェルマーの最終定理」の魅力に取りつかれていました。

 

いつかきっと、この定理を証明してみせる。

 

そう思っていたそうです。

 

そして、楕円曲線の研究者として数学を発展させていた中、「谷山・志村予想」に出会います。その時、ワイルズは幼いころの思いを再燃させます。

 

谷山・志村予想を解決できれば、フェルマーの最終定理は証明できる」

 

周りの仲間や家族には、一切フェルマーの最終定理を証明しようと試みていることを明かしませんでした。一人で孤独にこの難問と向き合うことになったのです。

 

フェルマーの最終定理谷山・志村予想

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なぜ、フェルマーの最終定理を証明するのに、谷山・志村予想が一役買ったのでしょうか。キーワードとなるのは背理法です。

 

背理法」とは…証明したい「命題」そのものを1度否定して、証明を続けた結果、どこかで矛盾が生じる。その矛盾によって、もとの「命題」は正しいと結論づける証明方法。

 どのようになるかというと、

 

  1. フェルマーの最終定理が成り立たず、等式を満たすような自然数nと自然数の組(x, y, z)が存在したと仮定する
  2. すると、「フライの楕円方程式」と呼ばれる特殊な楕円曲線が存在することになる。
  3. 「フライの楕円方程式」は特殊な楕円曲線で、モジュラーではない
  4. 谷山・志村予想「すべての楕円曲線はモジュラーである」に反する
  5. ゆえに、矛盾が生じたのでフェルマーの最終定理が成り立つ

 

ということは、裏を返せば

谷山・志村予想」が証明される→フェルマーの最終定理が証明される

ということになるのです。

 

ワイルズは、この「谷山・志村予想」を難解な理論を駆使して証明を試み、見事1995年にフェルマーの最終定理を証明したのです。

 

まとめ

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以上、非常にざっくりと記事にまとめてみました。

 

  • フェルマーの最終定理は、理解しやすいが、証明は超難解
  • 超難問の解決に、日本人数学者のアイディアが役立つ。その一人が志村先生

 

本当のところ、このフェルマーの最終定理をめぐる話は非常に内容が濃く、感動的です。フェルマーの最終定理をめぐるストーリーは、ぜひ1度読んでみることをお勧めします。筆者も何度も読み返している1冊です。

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また、フェルマーの最終定理の周辺の数学をわかりやすく解説している、次の本もおすすめです。

 

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